2024年3月8日(金)より渋谷ホワイトシネクイントほか全国順次公開
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introduction
マヒトゥ・ザ・ピーポー初監督作は、
詩的なことばと映像美で紡がれる“さよならと永遠”に
切実に向き合った真っ赤な⻘春映画。
エンドロールが終わっても共に生きよう
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GEZAN のフロントマンであり、音楽以外でも小説執筆や映画出演、フリーフェス・全感覚祭や反戦デモの主催など、独自のレイヤーによるカルチャーを紡ぐ活動で唯一無二の世界を作り上げるマヒトゥ・ザ・ピーポー。彼が初監督を務め、2022年の東京国際映画祭<アジアの未来部門>にも正式出品された映画『i ai(読み:アイアイ)』。マヒト監督の実体験をもとに、主人公のバンドマン・コウと、コウが憧れるヒー兄、そして仲間たちが音楽と共に過ごした日々、出会いと別れ、彼らの切実な時間が綴られていく。
主人公コウ役には、“全感覚オーディション”と 銘打たれたオーディションで約3,500人の中から抜擢された新星・富田健太郎。そして主人公の人生に影響を与え、カリスマ的な存在感を放つヒー兄役に、映画だけでなく舞台やダンサーとしても活躍する森山未來。ヒー兄の恋人・るり姉役を、映画やドラマ、舞台と活躍の幅を広げるさとうほなみ、ヒー兄の弟でコウとバンドを組むキラ役を、映画『世界は僕らに気づかない』で第37回高崎映画祭最優秀新進俳優賞を受賞した堀家一希。さらに吹越満、永山瑛太、小泉今日子ら多彩な実力派が顔を揃える。 - マヒト監督の紡ぐ“詩”と、キーカラーでもある“赤”が象徴的に使われる、寺山修司を彷彿させる独特の映像美が融合した本作。この純文学的な味わいの作品を撮影カメラマンとして支えたのは、木村伊兵衛写真賞受賞の写真家・佐内正史。そして、美術に佐々木尚、衣装に宮本まさ江、劇中画に新井英樹など、監督の思いに共鳴したカルチャー界の重鎮たちが集結。また、ヒー兄がフロントマンを務める劇中バンドのライブシーンで、実際の演奏を担うのは、監督をはじめとするGEZANのメンバーたち。ライブハウスの混沌と狂乱が臨場感たっぷりに描かれる。
storyあらすじ
i ai は“相逢”。もう一度逢う。
同じ時代の雨に打たれているあいあい傘の下、
人と人が会って、別れて、また出会う青春映画。
エンドロールが終わった後も共に生きよう。
兵庫の明石。
期待も未来もなく、単調な日々を過ごしていた若者・コウ(富田健太郎)の前に、地元で有名なバンドマン・ヒー兄(森山未來)が現れる。強引なヒー兄のペースに巻き込まれ、ヒー兄の弟・キラ(堀家一希)とバンドを組むことになったコウは、初めてできた仲間、バンドという居場所で人生の輝きを取り戻していった。ヤクザに目をつけられても怯まず、メジャーデビュー目前、彼女のるり姉(さとうほなみ)とも幸せそうだったヒー兄。その矢先、コウにとって憧れで圧倒的存在だったヒー兄との突然の別れが訪れる。
それから数年後、バンドも放棄してサラリーマンになっていたコウの前に、ヒー兄の幻影が現れて……。
cast出演者
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- コウ:富田健太郎
- Kentaro Tomita
1995年8月2日生まれ。東京都出身。主な出演作に、『サバイバルファミリー』(17年/矢口史靖監督)、『モダンかアナーキー』(23年/杉本大地監督)、ドラマ『来世ではちゃんとします』(20年/テレビ東京)、ドラマ『前科者 -新米保護司・阿川佳代-』(21年/WOWOW)、ドラマ『初恋、ざらり』(23年/テレビ東京)、舞台『ボーイズ・イン・ザ・バンド ~真夜中のパー ティー~』(20年)、舞台『雷に7回撃たれても』(23年) などがある。本作オーディションで応募総数3,500人の中から主演に抜擢され、話題を集める。
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- るり姉:さとうほなみ
- Honami Sato
「ヒーの存在が大きすぎる。この物語の中での彼の生き様は、側から見て、すごく突飛で不安定で格好良くて羨ましくて掛け替えがない。 そんな彼と共に生きられたことを幸せに思いました。 この世界に於いての、音楽とひととのある種暴力的な関わりが何故か心地いい。出会えて良かった。」
1989年8月22日生まれ。東京都出身。17年よりさとうほなみとして女優活動をスタート。近年の主な出演作品に、映画『窮鼠はチーズの夢を見る』(20年/行定勲)、NETFLIX『彼女』(21年/廣木隆一)、『愛なのに』(22年/城定秀夫)、『恋い焦れ歌え』(22年/熊坂出)、『銀平町シネマブルース』(23年/城定秀夫監督)、『次元大介』(23年/橋本一)、『花腐し』(23年/荒井晴彦)では第48回報知映画賞主演女優賞ノミネート。その他、ABEMAドラマ『30までにとうるさくて』(22年/主演)、木曜ドラマ『六本木クラス』(22年/EX)、『あなたがしてくれなくても』(23年/CX)、『彼女たちの犯罪』(23年/YTV)、『院内警察』(24年/CX)舞台ブロードウェイミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(22年)、『剥愛』(23年/主演)、『ハザカイキ』(24年)など多岐に活躍の幅を広げる。「ゲスの極み乙女」のドラマー、ほな・いこかとしても活動。
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- キラ:堀家一希
- Kazuki Horike
「初めまして、ヒー兄の弟、キラ役で出演しております、堀家一希です。本作では誰かとの出逢い、別れ、言葉には出来ない一瞬の美しさが、景色と共に切り取られています。僕自身も本作を通して会えなくなった人、これから出逢う人に想いを馳せる、良い機会になりました。是非皆様もスクリーンで経験していただきたいです。」
1997年11月21日生まれ。岡山県出身。主な出演作に、映画『泣くな赤鬼』(19年/兼重淳監督)、『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』(23年/英勉監督)、ドラマ『君と世界が終わる日に』(NTV)、『俺のスカート、どこ行った?』(NTV)、『初めて恋をした日に読む話』(TBS)、舞台『すべての人類が家にいる』(古川貴義脚本・演出)などがある。映画初主演作『世界は僕らに気づかない』(23年/飯塚花笑監督)で、第37回高崎映画祭最優秀新進俳優賞を受賞。1月12日~ドラマ「好きやねんけどどうやろか」(読売テレビ)に出演中。
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- 若頭:吹越満
- Mitsuru Fukikoshi
1965年2月17日生まれ。青森県出身。1984年より劇団WAHAHA本舗に所属し、『つぐみ』(90年/市川準監督)で初出演。99年の退団後も数多くの舞台、TVドラマ、映画に出演。06年より放送されている人気ドラマ「警視庁捜査一課9係」(現タイトル「特捜9」テレビ朝日系)にレギュラー出演。11年には映画『冷たい熱帯魚』(園子温監督)で長編映画初主演を務めるなど、映画・TVドラマ・舞台と幅広い分野で活躍中。主な映画出演作に、『たそがれ清兵衛』(02年/山田洋次監督)、『ヘヴンズストーリー』(10年/瀬々敬久監督)、『友だちのパパが好き』(15年/山内ケンジ監督)、『モリのいる場所』(18年/沖田修一監督)、『よこがお』(19年/深田晃司監督)、『嘘八百 京町ロワイヤル』(20年/武正晴監督)、『銃 2020』(20年/武正晴監督)、『大コメ騒動』(21年/本木克英監督)、『銀平町シネマブルース』(23年/城定秀夫監督)、『Winny』(23年/松本優作監督)、『リボルバー・リリー』(23年/行定勲監督)、『Love Will Tears Us Apart』(23年/宇賀那健一監督)などがある。
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- 久我:永山瑛太
- Eita Nagayama
「マヒトゥ監督と2人で試写を観ました。やられてしまいました。
物心ついてから自分の内側と外側で起きている、言語化出来ない、得体の知れない行き来する何かが、この作品から溢れ出ているのを皮膚から吸収してしまった。これが観たかったんだ。。昨今の不調和な世界に照射した赤い光『i ai』は、皆様にどんな具合で届くのか楽しみでしかたがない。」1982年12月13日生まれ。東京都出身。2002年に『青い春』(豊田利晃監督)スクリーンデビュー以降、数々の映画、ドラマに出演。1982年生まれ、東京都出身。『ディア・ドクター』(09年/西川美和監督)で日本アカデミー賞優秀助演男優賞、ブルーリボン賞助演男優賞を受賞。主な映画出演作に、『まほろ駅前多田便利軒』(11年/大森立嗣監督)、『ワイルド7』(11年/羽住英一郎監督)、『僕達急行 A列車で行こう』(12年/森田芳光監督)、『64-ロクヨン-前編/後編』(16年/瀬々敬久監督)、『友罪』(18年/瀬々敬久監督)、『HOKUSAI』(21年/橋本一監督)、『護られなかった者たちへ』(21年/瀬々敬久監督)、『怪物』(23年/是枝裕和監督)、『福田村事件』(23年/森達也監督)、『アンダーカレント』(23年/今泉力哉監督)などがある。公開待機作に、『風よ あらしよ 劇場版』(柳川強監督)など。近年では短編映画で自身初の監督を務めたり、「永山瑛太、写真」と題し、写真家として展覧会を開催するなど活躍の場を拡げている。
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- 店長:小泉今日子
- Kyoko Koizumi
「儚くて、激しくて、美しいこの映画に参加できて嬉しかったです。」
1966年2月4日生まれ。神奈川県出身。1982年歌手としてデビュー。同時に映画やテレビドラマなどで俳優業も開始。映画では2002年相米慎二監督『風花』にて報知映画賞主演女優賞、第25回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。2005年に豊田利晃監督『空中庭園』にてブルーリボン賞を受賞。2009年犬童一心監督『グーグーだって猫である』、黒沢清監督『トウキョウソナタ』にて文化庁芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。舞台では作・北村想/演出・寺十吾『草枕』にて第50回紀伊國屋演劇賞個人賞、第23回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。2005年から10年間、読売新聞で書評委員を務めるなど執筆としても活躍し、「黄色いマンション黒い猫」で2017年講談社エッセイ賞を受賞。2015年には自らが代表を務める「株式会社明後日」を設立。プロデューサーとして舞台演劇や音楽イベントなどの企画、制作に従事。
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- ヒー兄:森山未來
- Mirai Moriyama
「いつかの夏の終わりに撮影した『i ai』。細かな記憶は少しずつ薄れてきてはいるけれど、あの時間が僕に与えたインパクトは今でも明確です。目を瞑って立ち上がってくるイメージは、どこまでも突き抜けた、真っ赤な青。マヒトの詩的でプリミティブな作家性に溢れた処女作に関われたことを、おもしろおかしく思っています。映画でしか生まれることのなかった世界です。映画館で体験しなければ意味はないかと。」
1984年8月20日生まれ。兵庫県出身。5歳から様々なジャンルのダンスを学び、15歳で本格的に舞台デビュー。2013年には文化庁文化交流使として、イスラエルに1年間滞在、Inbal Pinto&Avshalom Pollak Dance Companyを拠点にヨーロッパ諸国にて活動。「関係値から立ち上がる身体的表現」を求めて、領域横断的に国内外で活動を展開している。主な映画出演作に、『モテキ』(11年/大根仁監督)、『苦役列車』(12年/山下敦弘監督)、『怒り』(16年/ 李相日監督)、日本・カザフスタン合作映画『オルジャスの白い馬』(20年/竹葉リサ、エルラン・ヌルムハンベトフ監督)、『アンダードッグ』(20年/武正晴監督)、『犬王』(22年/ 湯浅政明監督)、『シン・仮面ライダー』(23年/庵野秀明監督)、『山女』(23年/福永壮志 監督)、『ほかげ』(23年/塚本晋也監督)など。公開待機作に、『大いなる不在』(近浦啓監督)など。ポスト舞踏派。
staff製作陣
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- マヒトゥ・ザ・ピーポー
- 監督・脚本・音楽
「やっと公開が決まりました。
これは咳を我慢し、つられて季節も息をとめたとある夏、愛しき仲間と生傷を絶やさず駆け抜けた生きることについての物語です。
なぜ人は記録するのか?人はなぜ永遠に対して挑戦するのか?その答えを映画というフォーマットでしかすくいとれない瞬間の連続が肯定している。生きてる時間の中で死を生かそうとする試み、その痕跡が詩を呼び込む。
i ai、相逢、もう一度逢う。ううん、何度でも真実に会おう。わたしは映画という嘘の時間の中でたどり着いた本当がお守りのように、未来を照らすことを知っている。この正しく混乱した118分が歪んだ現実をサバイブする武器になることを確信している。」2009年 バンドGEZANを大阪にて結成。作詞作曲をおこないボーカルとして音楽活動開始。インディーズながらFUJI ROCK FESTIVALのRED MARQUEE 、WHITE STAGE、GREEN STAGEに出演。うたを軸にしたソロでの活動の他に、青葉市子とのNUUAMMとして複数のアルバムを制作。国内外のアーティストをリリースするレーベル十三月を運営、全感覚祭を主催。2019年に小説、銀河で一番静かな革命を幻冬舎より出版。GEZANのドキュメンタリー映画 Tribe Called DiscordがSPACE SHOWER FILMにて公開。
豊田利晃監督の劇映画「破壊の日」に出演。
エッセイ「ひかりぼっち」がイーストプレスより発売。ユリイカ2023年4月号にて特集号の発売。
映画i aiでは初監督、脚本、音楽を担当、PARCO配給にて全国上映。 -
- 佐内正史
- 撮影
「信号が赤になっただけで、赤だと車止まる、青で車は進む、黄色ーっ、それだけで、ぶち上がる私、ロケ地に向かう車の中、撮影帰りの車の中、橋を渡る、夜景、宙を見ていた、私は映画を撮っている、全カット冷めてない、酔ってもいない、私の一番が撮れている、目に見えない、iai、マヒト、映画、にピントが合っている、凄いな、なんでこうなったんだろう、こんなの初めて見た、忘れられない、アイアイアイなんだ。」
1997年、写真集『生きている』でデビュー。
2003年、写真集『MAP』で木村伊兵衛写真賞を受賞。
2008年に独自レーベル「対照」を立ち上げて写真集を発表しつづけている。最新刊に「写真の体毛」 「静岡詩」がある。
2009年、川崎市岡本太郎美術館にて写真展「対照 佐内正史の写真」、
2023年夏、静岡市美術館にて写真展「静岡詩」、
2023年9月22日から10月28日までタカ・イシイギャラリーamanaTIGPにて写真展「静岡詩」。
曽我部恵一とのユニット「擬態屋」では、佐内の詩と曽我部の音合わせをしたサウンド作品、1st Album『DORAYAKI』をリリース。 -
- 平体雄二
- プロデューサー
『百円の恋』で第88回アカデミー賞外国語映画賞の日本代表に選出されるなど、多数の映画賞を席巻。『アンダードッグ』では主演に森山未來を迎え、再びボクシングを題材に不屈のルーザーたちへ捧げる挽歌を作り上げる。またテレビドラマも多数製作。『離婚しない男-サレ男と悪嫁の騙し愛-』『シェフは名探偵』『死役所』など話題作を多く手がける。製作会社スタジオブルー代表
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statementマヒトゥ・ザ・ピーポーから、みなさんへのお願い。
人はなぜ記録するのだろう?きっとその飛行機のムービーを見返すこともないだろう。
時間が残ってしまうことが時折、酷に思えることがある。あらかじめ約束されたいつか思い出に変わる美しい時がそこに居座り続けることは、いずれわたしを追い詰めるかもしれない。そのことを想像する時、頭の空洞を駆け巡るさまざまな時間や人の顔がある。
金木犀の香りがする通学路、雨降りの朝にベランダの手すりにいたカタツムリの親子と雨上がりにかかった虹のこと、噛んだ跡のあるビートバン、ハウリングの中で演奏した夏の日の午後と焦燥。ありがとう。ごめんなさい。この頃の黒く焼け焦げた気持ちのことも忘れてしまうんだろうか?
できるだけ覚えておきたいが、わたしの記憶には限りがあることも、31年間この身体と付き合ってきたからわかる。
無理もないよなー。あまりにも唐突に多くのさよならが目の前を走り抜けていく。わたし自身、コロナ禍と呼ばれる近い時間の中でも友人がこの世を去り、そして唯一の故郷だったバンドGEZANのメンバーも東京を去っていった。その喪失に慣れることはない。神様が定めたのだとしたら、どうしてそのように学習することのできない設定にしたのか直接問うてみたいものだ。サヨナラへの抗体が体内にできるのはいつの日か?
ふと部屋の中で思っていた。ライブハウスや映画館に居るゴーストたちのこと。彼ら彼女たちはライトのついていない無人のフロアで、今、何と彷徨っているのだろう。未来で歌われるはずだった歌が部屋の隅でうずくまっている。それらの再生され損ねた記憶はどこへ向かえばいいのだろう?
ふつふつと映画を撮ることへの必然がわたしの中で育っていく。誰に頼まれたわけでもない。ただ無骨でわがままなわたしの自我がむくむくと成長していく。
「撮りたい」
そう、この感じ。紛れもなく生きてる。生きてる時間の中で死を生かし続ける。
あらためて記録することについて考えた。ここでいう記録は記号を残すことではない。気配、匂い、重さ、そういった画像からこぼれ落ちる存在の影にこそ、人の呼吸がある。わたしはその時間を撃ちたいのだ。
正直うんざりだ。
わたしの記録したい記憶はそこにはない。
いいことも悪いこともあったが、懸命に生きたその光もろとも焼き付けたい。皺が増えていくことだってキレイと呼びたいし、永遠と現実の境界線に張られたガラスの板、そこにつけた爪跡、それだってレタッチで消さずに残したい。
同じ時代の雨に打たれているあいあい傘の下で、人と人が会って、別れて、また出会う青春映画です。
演じるのは森山未來。その立ち姿から、存在することについての思考の跡跡が無数に見える。生傷を絶やさない人間は匂いがちがう。
ムービーのカメラは佐内正史。佐内さんが長編のムービーとして入るのはキャリアとしても初めてで、このビジュアルの写真撮影をした翌日に「マヒト君の映画は僕が撮らなくちゃいけないかな〜と思って〜。」と自ら名乗りを上げてくれた。嬉しかったな。どちらも瞬間に対しての切実さ、そして効率の悪い生き方は信頼できる。この二人の共犯者と共に時代の腹に日本刀を入れる。痺れるね。
そして、右も左もわからない中でやる!と挙手をした映画のプロジェクトは、スタジオブルーの平体さんという映画プロデューサーと出会うことで一気に具体性に向けて輪郭を得始めた。この出会いはかつてのメンバー、カルロスが同じいきつけのカレー屋だったことからのひょんな出会いで、スパイス香る店内でそのビジョンをぶつけ、今では同じ崖の先端に立ち、そして心中を約束した頭のおかしい人たちです。
人生って不思議だ。もうここにはいないかつての仲間が残した縁が未来に残り、形を成す。しかもカルロスが帰っていった地元でカメラを回すのだから。その終わりなき因果の渦たるや、まさにi aiの中で描く世界だ。
とはいえ、描きたいわたしのビジョンには到底及ばない。そのためのクラウドファンディングです。
わたしは会えなくなったゴーストたちの記憶と共に、この映画を作りたい。あなたにもいるはずだよ。そんな忘れることなどしたくない美しき敗北者が。わたしはそもそも彼ら彼女らを敗者と呼ぶことに全身で抗いたい。そしてこの映画が、これからの何度も経験するであろうあなたのサヨナラを、灯台のように照らすことをイメージしている。
上に名を連ねた何の前例もないわたしの想像力に賭けてくれる心ある人たち。あなたもその中の一人になってほしい。それはもう才能を残さず使い切り、この2時間を永遠に昇華することをもって返したい。想像力だけあればどこまでもいける。この閉塞した時代でそう言い切れるわたしやあなたでいよう。
この後フルキャストのオーディションをはじめる。撮影は九月。何かが起こるなら夏しかない。混乱の時代を生傷を絶やさず、走る。
わたしを映画監督にしてください。よろしくお願いします。 マヒトゥ・ザ・ピーポー
「『i ai』の劇場公開が決まりました。あの夏をいよいよ皆さんに観てもらえるのかと思うと感慨深いものがあります。2年半前の明石の海の匂い、深夜に一人徘徊した公園、子供達のアンコールの声、ギターの炸裂音、叫んだ屋上、全ての瞬間が今でも鮮度を保ったまま心に残っています。『i ai』の夏、最高だったな。紛れもなく人生の青春です。皆さんにこの作品を届ける事が出来ること、本当に嬉しく思っています。これから出逢える皆さんに心からの感謝を込めて。多くの人に『i ai』が届きますように。」