- 2024.03.19
- 春の風が吹いている
i aiが劇場公開された。今どんな気持ちなんだろう。文字を打ちながら自分に聞いてみる。今のところ明確にあらわせる単語はなく、なんだかうっすらと落ち込んでいる時と似た気配がゆらめいている。
クソっ。どんな気分なんだよ。窓を開けると透明な風が吹き込んでくる。春はなんだか不思議な気持ちを誘いだし、理由なく、いや、理由は気付けないだけであるのかな?少なくともその輪郭を回収することができず、ただ桃色に着色されたあざとい空気を肺に溜め込んでため息と一緒に吐き出す。風のことが今日も見えない。努力してきた今日も風の色が見えない。
もう何度目だろうか?映画館でi aiを見た。当たり前だけど、今までで一番見た映画になった。座席に座り見ていると横で鼻を啜る音、感動して泣いているのかなと思い、視線を少しおくるとどうも花粉症なだけみたいでわたしの淡い勘ぐりもティッシュに包まれて萎んだ。
スクリーンの向こう「言葉になんかできないけど言葉にしなくちゃ。」言葉を投げかけられた。もうとっくにわたしのものではない。自分が何を作ったのか、この一つの赤い塊を前に暗闇の中で対峙する。
で、答えは?
うん。
また黙り込むんだね。
うん。
作りたいからって誰でも作れるわけじゃないんだよ。映画って。
そうだよね。わかってるけど、感謝の仕方も伝え方もわからないんだ。
感謝してる時はありがとうって言うんだよ。そんなことも知らないの?
いや、知っている。けどその言葉じゃ足りない気がして。
それでまた黙り込むんだね。春のせいにして。君はやっぱりずるいね。
そうなんだよ。ずるいんだオレは。
あとどれくらい作品を残せるだろう。誰かが信用してくれなければ作品を残せない、そんなジャンルもある。映画はまさしくそうだった。
外の世界に出て人と関わるのは疲れる。インタビュー、同じ質問ばかり、疲れる。関係者試写、疲れる。コメントもらうの疲れる。うん、信頼してる友人が試写を見てコメントお願いしたら「ボクは映画をいいと思えなかった」と断られ、同じ日に尊敬してる役者からは30年で一番だと褒めてもらう。作品は一つでみんな違う人間なの疲れる。別の形のこころがそれぞれあること、うん、疲れる。
では平均点を狙いますか?あれとそれの間のラインを探しますか?
イヤです。断ります。
近所に半年くらい前にできたコーヒー屋へ行く。中にオープンカーを飾ってて、港区っぽい。港区のこと何も知らないけどね。小綺麗にはしてるが鼻につく感じが絶妙にダサくてこんなの流行るわけないだろ!と一人で愚痴ってたけど、しっかり流行ってる。わたしは世間様のことがてんでわからない。「いつもありがとうございます」そしてそんなコーヒー屋に通ってる人間の一人にわたしも数えられてる。
コーヒーを飲みながら、春の鬱っけな気分にため息をつく。横には甲子園100周年のバッチをキャップにつけたおじさんが簡易ラジオを握りしめてうたた寝をしていた。漏れてくる野球中継の音は聞かずにすやすやと眠り、寝息が風に混じる。
何度目かのため息をついた時、おじさんは目をあけ、横のわたしに「今日は春のいい日和ですね。」と言った。最低に近い気分だったけど「そうですね」とうそ笑いで返した。同じ日、同じ場所で同じ光を見てもこうも感想が違う。
「そうですね。」
よく考えたらずっとそうだった。バンドを始める前からずっと。わかられてたまるかと思いながら、そのことを人に手渡して困惑する瞳の中に自分を探した屈折の旅。皮を切らせて骨を断ち、間は取らない。むしろその両極端を引のばして入り口と出口を繋げる。ずっとそんな夢を見て同時に敗れながら落下し、節々はとっくに負傷している。
東京にきて何年だろう?はっきり言ってもう色々うんざりしていて、普通に売れたり、売れてる人らに混ざって勝ち組だよな?みたいなごっこの芝居にも心底うんざりしてる。そこが自分の衝動をいなしてくれるほど優れた場所でないことは理解した。そういうトライアルは他の設定と欲望のビジョンを持った人らがやればいい。わたしには挑戦したい境界がある。いきたい場所とそこにいきたい好きな人たちがいる。
ずっとそう、とやかく言う前に作品を残す。その波紋に巻き込まれ、浮かんだり沈んだり、それを繰り返すことを生活と呼んでみた。そしたら映画ができ上がってた。丁寧な暴力と発酵した孤独、もうどうしていいかもわからないクソな日々をくじきたての左足で蹴る。涼しい顔なんてしていられない。映画監督の余裕なんかはなからない。お前も生きていて、その当事者なら言葉を聞かせてくれ。評価しろ!こきおろせ!わからないを答えにするのはもう飽きた。
SUPER DOMMUNE
「映画「i ai(アイアイ)」公開記念 5時間SP 」
2024/03/20 WED19:00-23:00
●出演:マヒトゥ・ザ・ピーポー(i ai 監督 / GEZAN)
イーグル・タカ(GEZAN)
佐内正史 (i ai 撮影 / 写真家)
佐々木尚(i ai美術)
森直人(映画評論家)
永井玲衣(哲学研究者)
行定 勲(映画監督)
今泉 力哉(映画監督)
富田健太郎(コウ役)
堀家一希(キラ役)
KIEN(エン役)
イワナミユウキ(なみちゃん役)
新井英樹(漫画家)
ヴィヴィアン佐藤(美術家、ドラァグクイーン)
山塚リキマル(作家/ライター)
奥冨直人(BOY)
●生LIVE:マヒトゥ・ザ・ピーポーx佐内正史
●本邦初公開ライブ映像
出演:マヒトゥ・ザ・ピーポーx 小泉今日子
GEZAN x 森山未來 x富田健太郎 x さとうほなみ
________________
________________
PROGRAM INFO
ENTRANCE 3000円(TICKETはこちら)
(超エクスクルーシヴ限定50人のスタジオ観覧者をPeatixで販売中!! スタジオに直接おこしください!)
〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO9F「SUPER DOMMUNE」
15-1 Udagawa-Cho Shibuya-ku Tokyo 150-0042|Shibuya PARCO9F「SUPER DOMMUNE」
SUPER DOMMUNE FLOOR GUIDE MAP
________________
■ ご来場者はカメラに映る可能性がごさいますので、ご了承のうえご参加ください。
■ スタジオには、クロークやロッカーございません。手荷物は少なめでご来場のうえ、ご自身での管理をお願いします。
■ ドリンク類はスタジオ内でお買い求めいただけます。お飲み物の持ち込みはご遠慮ください。
________________
<新型 コロナウイルス、インフルエンザA(H1N1)亜型、A(H3N2)亜型、B型等の感染症予防および拡散防止対策について>
• 発熱、咳、くしゃみ、全身痛、下痢などの症状がある場合は、必ずご来場の前に医療機関にご相談いただき、指示に従って指定の医療機関にて受診してください。
• お客様入場口に消毒用アルコールの設置を致します。十分な感染対策にご協力ください。
• 会場にて万が一体調が悪くなった場合、我慢なさらずに速やかにお近くのスタッフにお声がけください。
• ご来場のお客様はカメラに映る可能性がございますので、ご了承のうえご参加ください。
• 会場には、クロークやロッカーはございません。手荷物は少なめでご来場の上、ご自身での管理をお願いいたします。
• 本イベントはDOMMUNEからの生配信を実施いたします。
DOMMUNE YouTubeチャンネル、もしくはDOMMUNE公式ホームページからご覧いただけます。
• 生配信では、YouTubeのスーパーチャット機能による投げ銭を募っております。何卒サポートをよろしくお願いいたします。
• 会場の関係などにより、開演時間が前後する可能性があります。予めご了承ください。